ASBMR @トロント-2

他の薬剤で気になったのは、

2)アバロパラチドと骨折治癒

アバロパラチドが骨盤骨折の保存治療において、骨折治癒を促進する可能性があることを示した報告がありました。

アバロパラチドとプラセボの、Phase 2のランダム化盲検試験で(n=22 vs 26)、
3ヶ月後に骨折部の骨形成をCTで評価しています(Bridging score:0-4)。

平均年齢82歳、94%が恥坐骨骨折で、60%が仙骨骨折の合併、40%に少なくとも1つの転位骨折あり、
アバロパラチド群で、転位のある骨折部でBridging scoreが有意に高いという結果が得られていました。

しかしよく保存治療の骨盤骨折を48例もエントリーできたな。HSS(Hospital for Special Surgery)からの報告でした。


3)ゾレドロネート

私も目をつけていた大腿骨近位部骨折に対するゾレドロネートの研究が、MGH(Massachusetts General Hospital)から報告されていました。

大腿骨近位部骨折を発症した患者に入院中にゾレドロネートを投与すると(In patients zoledronic acid:IP-ZAと称していました)、
再骨折率だけでなく死亡率も改善する、という内容です。

研究デザインがやや特殊で、この問いを解明するRCTは、倫理的に実施不可能ですので、
この研究では、MGH関連の多施設で、ゾレドロネートありと治療なしの人たちを、前向きにデータ収集しておいて、
Propensity score でマッチさせて、RCTを模していました。
これは、いわゆる後ろ向きのPropensity score matchingではないようですが、やはり質疑応答では、病院間のケアの違いを指摘されていました。

結果はすばらしく、ゾレドロネート 652人 vs コントロール1926 人(平均年齢 80.9 歳)の比較を行い、
ゾレドロネート群では、2年後の死亡率を有意に低く(HR:0.62)、
しかもその90%は1回しか投与されてませんでしたが、それでも死亡率の低下を認めていました(HR:0.70)。
ただし、90歳以上のサブグループでは、死亡率に差はありませんでした。寿命もありますからね。

再骨折に関しては、どんな切り口でもゾレドロネート群で再骨折の抑制を認めていました。

ゾレドロネートが死亡率を改善するというのは以前から報告されており、その機序は十分にわかっていないのですが、
大腿骨近位部骨折は1、2年後の死亡率が高いですので、今回の症例数でも結果が得られましたのだと思います。
3〜4割減ですので、なかなかのものです。


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— posted by 千葉恒 at 06:39 am   commentComment [0] 

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