US医学教育

留学してると、日本人からよく「日米で医療のレベルってどのくらい差があるの?」と聞かれます。
医療って色んな要素があって、かつ、僕もこちらで医療行為をしているわけでないのではっきりは言えませんが、色んな人の意見も交えると、下記みたいな感じでしょうか。

- 医師のレベル: 上は同等。米国の方が医学教育が良く、下の水準は高そう。
- 薬・医療機器: 米国が有利。多くの新薬、新医療機器は米国で開発。
- 診療システム: 米国が合理的。病院や人材が専門化されている。その分スタッフが多く必要。
- 医療費・医療保険: 日本の圧勝。上記の理由で米国の医療費、保険料は異常に高い。虫垂炎で2〜300万円の請求。国民の2割弱が無保険。
- 患者の環境因子(食生活や交通事故、犯罪など): 日本の圧勝、米国の交通事故死は日本の約3倍、殺人は約7倍。

どちらがいいとは簡単には言えませんね。
平均寿命はもちろん日本が上で、日本の医療を参考にすべきという発表を米国で見たこともあります。

医学教育に関しては、正直、米国が優れていると思っています。
例えば整形外科の場合には下記のようなキャリアが必要です。

普通大学:4年間。その後、医学部に入るためには、良い推薦状やボランティア歴が必要なので、卒後すぐに医学部に行かずに大学院で研究員やボランティアなどをする人が多いです。僕のラボの米国人の半分は、実はそんな子達で、医学部に行く踏み台として所属しています。
医科大学:4年間。ポリクリ生の多くは20代後半~30代なので、皆、大人な感じです。何年かに渡って、医師国家試験を受けます。

卒後1年目:インターン。いろんな科をまわります。整形外科は既に選択した状態です。UCSF整形外科の定員は7人/年。狭き門です。
2-3年目:ジュニアレジデント。4年間のレジデント期間にUCSFの場合、4つの大学病院の整形外科の、全ての分野(脊椎、外傷、スポーツなど)を回ります。
4-5年目:シニアレジデント。特に5年目はチーフレジデントと呼ばれ、計35人のレジデントのリーダーとして振る舞います。
6年目:フェロー。ここから専門家の道を歩みます。近年は2種類(脊椎+外傷フェローなど、2年間)回る人も多いようです。

7年目~:アテンディング(指導医)。ここから立派な「整形外科医」ということになります。教えられる側から教える側へ急に立場が変わります。専門家としては不勉強は許されず、緊張感は続きます。当直もなくなりオンコールになります。給料もどんどん上がります。上へ登りつめれば年収は1億円を超えます。

未達成者と成功者がはっきりしてて、いかにも「アメリカンドリーム」モデルですね。加えて、教育期間が長く経費もかかるので、借金も返さねばなりません。若者は必死で、苦労を惜しみません。

日本のMD - PhDシステムは僕は肯定派ですが、同じ年齢の米国のアテンディングに負けたくない思いが、こちらで高まりましたね。帰国したら臨床を鍛え直したいと思ってます。

— posted by 千葉恒 at 01:34 pm   commentComment [0]  pingTrackBack [0]

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