2日目は鏡視下Bankart修復術を行いました(cadaverは左肩でした)。
Bankartとは肩甲上腕関節の前方脱臼などによって関節唇の前下部が剥離してしまい、肩関節の不安定性が生じる病態です。
関節内の鏡視後、前方ポータルを作成します。カテラン針を経皮的に刺し関節内で針の先端を確認して、SSc(肩甲下筋腱)とMGHL(中関節上腕靭帯)が交差しているところに針を出したいのですが、出せない・・・。
何度やり直しても同じところから針が出てくるので大幅に方向を修正すると、視野の中に針が出てこないという状況に陥ってしまいました。
先に進まず、梶山先生に助けていただきました。頭ではわかっているのに、鏡視下でできないもどかしさでいっぱいでした。
男性だったため、関節唇はしっかりしていました。
先端がL字状のベーパーで関節唇と関節窩頚部の境界に切り込みを入れ、関節窩の5時ぐらいの位置までラスパで十分に剥離します(術中所見①)。関節唇下縁(7時半から5時ぐらい)は関節窩上に設置するために、関節軟骨を一部切除しました(肩甲上腕関節をtightにして再脱臼を予防する目的だと思います)。
グラスパーを使って、十分に関節唇が剥離されているか、さらに関節唇を関節窩のどの位置まで引き上げるかを確認しました(術中所見②)。
先ほど関節軟骨を切除した部位(6時と7時半)にアンカーを挿入(術中所見③)。
剥離した関節唇を十分に持ち上げるように7時半の縫合糸から結紮しました。ここで、結紮部位がなるべく下側にした方がいいと梶山先生に教えていただきました(下から持ち上げた関節唇を支えるため)。
6時の縫合糸も同様に結紮しましたが、ホストとなる側を反対にしてしまったために、関節窩側に結紮ができてしまいました(術中所見④)。
9時と10時半にもアンカーを挿入して、同じように結紮しました(術中所見⑤)。
10時半のアンカーは角度がきつくなるので、関節面に平行になるように挿入するほうがいいと梶山先生にアドバイスをいただきました。
この段階で終了時刻になり、腱板疎部の縫縮まではできませんでした。
2日目のトレーニング終了後ダイアモンドヘッドのふもとを梶山先生とランニングしました。
3年前も同じコースを走りましたが、今回の方が暑さのためきつかったです。
2日間みっちり指導してくださった梶山先生、ありがとうございました。
そして時間がなくて焦っているときに、サッと糸を引いてくれたり、アドバイスをしてくれた西野先生、ありがとう。
今回のトレーニングでの一番の収穫は「やっぱり肩の鏡視下手術はおもしろい」と感じることができた点だと思います。
本当に細かい、繊細な作業をしていますが、一方でびっくりするほどtightに結紮されており、このギャップに魅力を感じてしまいます(トレーニングの最後に実際の手術部位を目視で確認しました)。
鏡視で拡大して、いろいろな器具を使うからこそできる手術なんだと思います。
1年も手術や臨床から離れていますが、手術室での独特の緊張感や執刀後の爽快な疲労感を少しだけ思い出すことができました(cadaverなのでちょっと大袈裟ですが・・)。
1年後、留学が終わって長崎に戻ってからは、是非肩の手術をなりたいなと思います。
1. kazico — 2016/07/07@20:16:13
また、修練医の案内、ありがとうございます。
整形のHPの方にも、アップさせていただきました。
また、佐田先生のキャダバーのことも、少しまとめて原稿をいただけませんか?医局員レポートにもアップしたいと思います。
よろしくお願いいたします。