日本で行っていた肩甲骨の形態解析を論文にしているところです。
肩甲骨は個体差が大きく、形態も複雑であり、研究テーマとしておもしろいのではないかと千葉先生のアドバイスを頂き始めました。
腱板断裂の患者さんなどが対象で、3D-CTを使って関節窩からの肩峰および烏口突起の長さや角度計測を行いました。
研究開始前にかなりの論文を読み、過去のデータや計測方法を参考にして形態解析を始めたはずなのですが・・・。
最近論文を再度チェックしていると、参考にすべき論文を大量に見落としていたことが発覚し、愕然としています。
肩峰の形態を計測する方法の1つにCritical Shoulder Angle(CSA)というものがあります。
True-AP(肩関節正面撮影)で撮影したX線で、関節窩の上端下端を結ぶ線を引き、さらに下端から肩峰外側端を結んだ角度を計測します(図1)。
この角度が35°を超えると腱板断裂と、一方30°未満では変形性肩関節症との関連があると報告されています。
過去の論文では、このCSAに関してはほとんどがX線で計測しており、3D-CTでの解析はごくわずかでした。
専用ソフトウエアを用いてCT画像から肩甲骨のみを抽出しCSAの計測を行おうとしたところ、肩甲骨の前傾などを考慮しなければならないことに気づきました。
通常、肩甲骨は10°程度前傾し、上方回旋(肩甲棘が水平面となす角度)が約5-10°あると言われています。
なんらかの基準点がないと、正確な計測は難しいと考えましたが、研究当初はこうした基準を過去の論文から探すことができませんでした。
しかし、つい先日これに関する論文を3本ほど見つけ、基準点を関節窩の中心、肩甲棘三角(肩甲棘と肩甲骨内側縁の交点)、肩甲骨下角に設定していることがわかりました(図2)。
肩甲骨解析の分野ではこれがスタンダードとなっているようです。
かなり論文を検索しチェックしたはずだったのですが・・・。
これに準じてCSAを計測しないといけなかったと感じています。
千葉先生、岡崎先生と相談し、今月下旬からの一時帰国で再度計測しなおすことにしました。
かなり遠回りをして無駄な時間を費やしてしまったと少し落ち込みました。
しかし、今回時間をかけたことは次の研究テーマである肩甲骨のHR-pQCTで生かせると信じて、プラス思考でいきたいと思います。
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