没頭中

男性骨粗鬆症の統計解析もほぼ終了しました。
今は参考文献を探すために1日中PubMedで論文チェックをしています。
1年の縦断研究では興味深い結果が出るとは思っておらずあまり期待はしていませんでしたが、幸い予想がはずれました。
 
初めはどうやって解析し、どういうふうに結論にもっていくのか見当がつきませんでした。
縦断研究なので、1年間での変化率を解析してみようとメンターのAndyにアドバイスをもらってはいましたが、1年程度で変化があるとはどうしても思えず、どうやってこのデータをまとめるのかイメージすらできませんでした。
とりあえずそれぞれのパラメータのbaselineとfollow-upを比較してみると、意外にも脛骨(被験者全体)で皮質骨BMDの低下や皮質骨多孔性の上昇が有意にみられました。
もしかしたら興味深い結果が出るかもしれないと思い、試行錯誤しながら解析を続けました。
DXA(骨密度検査)のデータを使って、DXA NormalグループとDXA低値グループ(骨粗鬆症およびその前段階の骨量減少症)の2群にわけて、パラメータの比較をしたところ、次のような結果が出ました。
 
①脛骨の皮質骨多孔性の増加率;Normal群 > DXA低値群(*グラフ1)
②橈骨の皮質幅はDXA低値群で有意に低下(*グラフ2)
③DXA低値群では橈骨の極モーメントが有意に低下(剛性が低下しており外力を受けて変形しやすい)(*グラフ3)
 
②と③はすんなり理解できましたが、①はどうしてこんな結果が出たのか解釈に苦しみました。
論文をチェックしていると、いくつか参考になりそうな文献にあたりました。
・女性と異なり、男性は若年から緩やかに皮質骨多孔性が上昇している
・脛骨ではintracortical(皮質骨の中間の層)で皮質骨の多孔化が生じやすい(*図1の青色の部分)
・骨粗鬆症患者では皮質骨の海綿骨化が生じやすい(海綿骨に接する皮質骨の多孔化によって外見上、皮質骨が海綿骨へと置き換わった状態)(*図2)
 
これらの文献から、DXA低値群では皮質骨の多孔化が生じていても、海綿骨との境界部でおきやすく、皮質骨の海綿骨化によって(皮質骨だった箇所が海綿骨に置き換わることで)、皮質骨多孔性はあまり増加しないと考えました(intracorticalの部分に生じた多孔化と異なる)。
この皮質骨の海綿骨化を考えると、①の結果も説明できるのではと思います。
 
解析結果のグラフを作成(ぼくの場合、数字のみが羅列された表では、直感的に理解ができません)→結果を自分なりに解釈→その根拠となる文献をさがすというプロセスをひたすら繰り返しているところです。
時間や労力を要する作業ですが、数多くの論文をチェックすることで新たな知識を得ることができ、朝から夜まで研究に没頭している状態です。
これも留学でしか経験できない貴重な時間だなと思っています。
 
CtPO
グラフ1
ScreenShot2016-05-10at91428AM
グラフ2
 
MOI
グラフ3
NONALNUM-6Z2S-E
<図1> Jasmine A Nirody, et al. Spatial distribution of intracortical porosity varies across age and sex. Bone 2015
  
 
 
 
 
Ego
<図2>Roger Zebaze, et al. Cortical Bone; A Challenging Geography. J Bone Miner Res. 2014

— posted by 佐田潔 at 11:51 pm   commentComment [0]  pingTrackBack [0]

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