予定から遅れること半年、やっと長崎のHR-pQCT研究の、第1弾の論文がアクセプトされました。
「01PRE」というコードで管理されているこの研究は、HR-pQCTの精度(Precision)に関する研究です。
新しい計測機器を日本で初めて使うわけですので、まずその精度を検証するのは、私たちの役割だと思って、この研究を始めました。
まず「計測機器の精度」とは何かですが、「ある計測機器が同じ物を何度計測しても同じ数値がでるか」ということで、
何回計測しても同じ計測値がでれば、それは「完璧な精度の計測機器」ということになります。しかし、そのような計測機器は、実際の医学の世界には存在しません。
研究デザインですが「15人の被験者を、0、1、4週で合計3回撮影し、計測値の再現性を骨構造パラメーターごとに解析する」というものです。(正確には、検者内再現性と検者間再現性の両方を検討したので、検者Aが3回、Bが1回、Cが1回の合計5回の撮影です。)
「15人」は、骨密度測定装置の精度を検討する際に、必要とされる最低人数が14人、という有名な論文があり(1995年にUCSFから出ています:Glüer, C. C. et al. Accurate assessment of precision errors: how to measure the reproducibility of bone densitometry techniques. Osteoporos Int 5, 262–270 (1995).)
それに基づいて、ISCD (International Society for Clinical Densitometry) という骨密度測定装置の国際組織のOfficial Positions でも、「Measure 15 patients 3 times, or 30 patients 2 times, repositioning the patient after each scan」との記載があり、それに従った設定です。
「0、1、4週」にした理由は、同日に3回撮影すると、検者が記憶しているので同じような撮影ができてしまい、
加えて、CTのコンディションも同じなので、有利な結果が導かれてしまうからです。
「15人の被験者を集めて、0、1、4週に来てもらって撮影する」というのは、意外と大変な作業で、
撮影はHR-pQCT導入後の2015年8月から始まって、同年の12月までかかりました。
2016年1月から構造解析、統計解析と進めていきましたが、15人×5回×2部位=150解析はまぁまぁ地道で(検者Bの岡崎先生、検者Cの黒木先生に感謝です)、
しかも解析終了後に、構造解析のアルゴリズムに小さな欠陥があることを発見し、スイスの本社と交渉し、変更を加え、解析のやり直しも行いました。
HR-pQCTを導入して1年以内、つまり「2016年7月までに、論文を1本通す」が私の目標だったのですが、
日々の臨床業務にも追われ、結局、論文が完成したのが、2016年8月。
8〜10月に大きな雑誌にリジェクトされ、10月に投稿したJournal of Clinical Densitometry (Impact Factor: 2.644)というマニアック雑誌に、12月にマイナーリビジョンをいただき、そして晴れて2017年1月、予定より遅れることちょうど半年で、アクセプトに至りました。
今はとりあえず、ホッとしています。
長くなりましたので、HR-pQCTの精度の結果については次回、、
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