TCVO -3

表2はX線評価です。

TCVOにより、
1)%MAとFTAは、術前の内反膝(%MA 1%)から、術後に軽度外反膝(60%)に改善されています。
2)LDFAは大腿骨の角度ですが、大腿骨の骨切り術ではないので、当然それは変化していません。
3)MPTAは脛骨の角度ですが、術前の脛骨の内反(83度)が、術後に軽度外反(91度)に改善されています。
4)JLCA(図)は関節内の角度ですが、術前の関節内での内反(6度)が、術後に改善(1度)されています。
5)内反および外反ストレス(100N)をかけたレントゲンで、JLCAの変化角をみて、内外反動揺性を評価しましたが(図)、術前は8度の動きがありましたが、術後は4度に改善しています。

TCVOの特徴と言えるのが、(4)JLCAの大きな改善と、(5)内外反ストレスでのJLCA変化角の改善です。
これは、TCVOが関節内に骨切りを加えて、関節面の形態を変化させていることが理由です。

次回で終わります。手術適応について考えます。

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— posted by 千葉恒 at 07:48 am   commentComment [0] 

TCVO -2

論文の要点をまとめておきます。

図1はTCVOのシェーマです。
Aが術前で、左膝は高度に内反変形し、内側の関節裂隙は狭小化し、外側の関節裂隙は開大しています。
そこにL時型の骨切りをし、外反矯正します。
Bが術後で、骨切り部には骨移植をし、骨片はロッキングプレートで固定しています。荷重線は外側関節に移動し、亜脱臼していた外側関節が適合しています。
Cが抜釘後です。”外側関節で荷重している感”が出ています。

TCVOの利点は、外側関節の整復、結果として得られる、両側関節での荷重、および、関節安定性の改善です。
他の利点としては、骨切りが外側関節に及んでいないため、術後の荷重への強度があり、また、スクリューは必ずしも外側関節まで挿入する必要もありません。

図2は、TCVO開発の背景として示した、1980年代のドーム型HTOの症例です。

荷重線は外側に移動させたはずなのに、”外側関節で荷重している感”がありません。
HTOの目的は、荷重の外側関節への再配分ですが、それが得られていない感じがしますね。

このままここで、長々と論文を書いてしまいそうですが、また次回。

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— posted by 千葉恒 at 09:12 am   commentComment [0] 

TCVO -1

TCVOの論文がやっとアクセプトされました、、なんと10年もかかっていました。

TCVO(Tibial condylar valgus osteotomy:脛骨顆外反骨切り術)は、変形性膝関節症の手術である高位脛骨骨切り術の変法であり、膝のアライメント矯正と不安定性の改善を同時に獲得する関節形成術です。

1990年に、私の父である 千葉剛次 が開発し、現在、全国の膝の骨切り術の達人たちが、適応のある患者さんに対して使ってくれているようです。

元長崎大学病院講師の寺本司先生(現 福島県立医科大学教授)が、長年にわたりこの手術の伝道者となっていただいていました。現在、長崎大学病院では、膝グループのチーフである米倉暁彦先生がこの手術を数多く行っており、全国より見学者に来ていただいています。

長崎大学発の貴重なオリジナル技術の1つとして、英語論文を早く書くことを求められていましたが、父は英語論文を書くタイプでは全くありません。自然と、私にその役割が与えられていました。

2007年に、私が長崎大学病院に戻ってきた時、大村市立病院にある父のデータをもらって英語の論文を一人で書き上げました。今思うと、専門医も大学院も終えてなかったので、英語論文の書き方なんて全くわかっておらず、今思うとはずかしくなるような、むちゃくちゃな論文を書きました。

父は術後の臨床スコアを縦断的にまめに収集するタイプではないので、X線評価だけで論文を書くことになりましたが、投稿したところ一蹴でした。私もX線評価だけでは論文としておかしいと思っていたので、どうしたものかと悩んでいました。

その後、2008~2011年にかけて、宮本俊之 先生(現 長崎大学病院 外傷センター 准教授)が、大学病院でTCVOを復活させよう、千葉に全部してもらおう、と提案していただき、宮本先生と米倉先生の骨切り適応の症例を、私が担当させてもらっていました。当時は月に1例程度でしたので、3年間で30例程度だったと思います。

早く出したかったので、2008~2009年に行った症例で、女性で定量的ストレスXpのデータがある、最初の10例をまとめることにしました。

論文の内容としては、1)TCVOの原理とコンセプト、現在のTCVOの手術手技と後療法(父の時代は、ロッキングプレートがなかったので、手技やリハビリが異なります)と、2)臨床成績およびX線学的成績

留学帰国後の2013年に、1年の短期成績を投稿しましたが、1年は短すぎるとのことで、4誌で全滅。。コンセプトだけではダメでした。そんなこんなしていたら、2014年に5年成績が出そろったので、2015年に投稿を開始しましたが、3誌で全滅、

大学院~留学時代に、JBMR、OPI、OC、Boneなどの研究雑誌にアクセプトされてきたプライドもズタズタで、新しい術式をまとめた臨床の論文を通すことが、いかに難しいかを知りました。日本雑誌であるJOSのレビュアーにもリジェクトをくらい、ちょっと途方に暮れていました。

そして2017年1月、骨切り術に理解のあるドイツの膝学会の雑誌「Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery(IF 1.6)」に、ついにアクセプトをもらいました、、、感無量です。

Tibial condylar valgus osteotomy (TCVO) for osteoarthritis of the knee: 5-year clinical and radiological results.Link
Chiba K, Yonekura A, Miyamoto T, Osaki M, Chiba G.
Arch Orthop Trauma Surg. 2017 Jan 28. doi: 10.1007/s00402-016-2609-3.
もちろん、オープンアクセスにしています。

10年におよぶ私の戦いは終わりました。もうほとんど怨霊。義務を果たし、解放されました。

普段は「いらない」にチェックするoffprint(別刷)ですが、今回はオーダーしています。
父が生きている間に(ってまだ74歳ですが)、それを手わたせるなんて、僕はしあわせ者ですね。


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— posted by 千葉恒 at 08:56 pm   commentComment [2] 

HR-pQCT、広島へ!

日本で2台目のHR-pQCTが、広島市に導入されました!

設定やトレーニングの手伝いをしに、3日間ほど広島に行っていました。
訪問に先立って、広島市のお隣の呉市で、骨粗鬆症とHR-pQCTに関する講演をさせていただきました。

主催は「呉・地域包括医療における骨粗鬆症を考える会」で、近年の骨粗鬆症リエゾンの普及を背景に、世話人は、整形外科、乳腺外科、産婦人科、呼吸器科、歯科、口腔外科、看護師、理学療法士、薬剤師と幅広い面々。

会場にも100人近い多職種の方々に集まっていただき、骨粗鬆症の薬物治療、および、HR-pQCTの臨床応用について、お話させていただきました。
講演後の立食会の後に、慰労会という名の打ち上げが20名ぐらいで行われましたが、骨粗鬆症に興味のある色んな職種の人が、和気あいあいと飲んで語り合って、いい会でしたね。

HR-pQCTが導入された病院は、シムラ病院という広島市中区にある民間病院で、外傷や人工関節、脊椎などの臨床整形外科を専門としてきましたが、
今回、骨粗鬆症を専門的に検査できる機関として、HR-pQCTとDXAの導入、新規スタッフの増員を決定しました。

中心人物は、沖本信和先生で、骨粗鬆症やスポーツ障害を専門家であり、シムラ病院で毎週金曜日に専門外来をされており、
今後、HR-pQCTを用いた骨粗鬆症や整形外科疾患の診療や研究を進めていく予定です。

さて、日本で2台目となったわけですが、世界でのHR-pQCTの導入数の動向は、
第一世代(旧型) 北米 12台 欧州 27台 アジア 2台(香港、マレーシア)
第二世代(新型) 北米 12台 欧州 7台 アジア 3台(長崎、広島、北京)
となりました。

日本の科学技術のレベルを考えると、5台ぐらい入ってもいいと思います。
今後、広島と長崎が協力しあい、日本から多くのエビデンスを創出できればと思っています。

トレーニングが終了した昨日の帰り際、広島のHR-pQCTには、すでに愛着がわいてしまい、
僕の中では、長崎のHR-pQCTの「妹」って感覚になりました。名前こそつけませんでしたが。

長崎のHR-pQCTには、時々話しかけるのですが(気持ち悪い?)、
長崎に帰ってきて、今朝「かわいい妹だったぞー」と話しかけてしまいました(気持ち悪い?)。


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— posted by 千葉恒 at 09:28 am   commentComment [4] 

01PRE -3

いくらでも書けそうな気がしますが、今回で終わります。

Ct.Po(cortical porosity)のRMS%CVが高い原因ですが、いくつかの理由が候補としてありますが、最も有力な理由は、
検出しているCt.Poの数値があまりに小さいため、その検出の程度が少し異なるだけで、大きな変動になってしまうことです。

例えば、ある症例の橈骨のCt.Poは、0.41、0.54、0.49%という計測値になりました。
0.41%というのは、皮質骨の全体積にしめる、多孔性の体積の割合が0.41%であることを意味し、
これは1%以下のごくわずかな多孔性と言えます。

その症例の2回目の撮影では、検出の程度が0.13%だけ増えて、0.54%になってしまいました。
最終的に、0.41、0.54、0.49%という計測値となり、数値としてはわずかな変動ですが、
計算すると%CVは13.7%となってしまいました。

「出現自体が小さい病変の再現性を見る場合、検出の程度がほんの少し変わるだけで、大きな変動になる」
というのが、Ct.PoのRMS%CVが高くなった原因と考えられています。

では、Ct.Poが使えないパラメーターか?と言われると、実は全く違います。

多くのHR-pQCTの研究で、主に有意差が出るパラメーターが、なぜかCt.Poなのです。
Ct.Poが注目されている理由の1つがここにあります。

「Ct.Poは変動を超える変化をしやすい」ということですが、
そこで参考になるのが、LSC(least significant change:最小有意変化)という概念です。

計測値の変化が有意と考えられる最小の値を意味するのですが、
通常、95%信頼区間を得るために、%VCに2.77をかけたものが最小有意変化とされています。

添付は、各パラメーターのLSCの表ですが、例えば、橈骨のCt.PoのLSCは0.24%で、
橈骨のCt.Poの変化が0.24%あれば、これはかなりわずかな数値なのですが、有意な変化と言える
ということを意味しています。

これはレビュアーとのやりとりの中で気付いたことで、いいレビュアーに出会えたなと感謝しています。

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— posted by 千葉恒 at 08:45 am   commentComment [0] 

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