TCVOの論文がやっとアクセプトされました、、なんと10年もかかっていました。
TCVO(Tibial condylar valgus osteotomy:脛骨顆外反骨切り術)は、変形性膝関節症の手術である高位脛骨骨切り術の変法であり、膝のアライメント矯正と不安定性の改善を同時に獲得する関節形成術です。
1990年に、私の父である 千葉剛次 が開発し、現在、全国の膝の骨切り術の達人たちが、適応のある患者さんに対して使ってくれているようです。
元長崎大学病院講師の寺本司先生(現 福島県立医科大学教授)が、長年にわたりこの手術の伝道者となっていただいていました。現在、長崎大学病院では、膝グループのチーフである米倉暁彦先生がこの手術を数多く行っており、全国より見学者に来ていただいています。
長崎大学発の貴重なオリジナル技術の1つとして、英語論文を早く書くことを求められていましたが、父は英語論文を書くタイプでは全くありません。自然と、私にその役割が与えられていました。
2007年に、私が長崎大学病院に戻ってきた時、大村市立病院にある父のデータをもらって英語の論文を一人で書き上げました。今思うと、専門医も大学院も終えてなかったので、英語論文の書き方なんて全くわかっておらず、今思うとはずかしくなるような、むちゃくちゃな論文を書きました。
父は術後の臨床スコアを縦断的にまめに収集するタイプではないので、X線評価だけで論文を書くことになりましたが、投稿したところ一蹴でした。私もX線評価だけでは論文としておかしいと思っていたので、どうしたものかと悩んでいました。
その後、2008~2011年にかけて、宮本俊之 先生(現 長崎大学病院 外傷センター 准教授)が、大学病院でTCVOを復活させよう、千葉に全部してもらおう、と提案していただき、宮本先生と米倉先生の骨切り適応の症例を、私が担当させてもらっていました。当時は月に1例程度でしたので、3年間で30例程度だったと思います。
早く出したかったので、2008~2009年に行った症例で、女性で定量的ストレスXpのデータがある、最初の10例をまとめることにしました。
論文の内容としては、1)TCVOの原理とコンセプト、現在のTCVOの手術手技と後療法(父の時代は、ロッキングプレートがなかったので、手技やリハビリが異なります)と、2)臨床成績およびX線学的成績
留学帰国後の2013年に、1年の短期成績を投稿しましたが、1年は短すぎるとのことで、4誌で全滅。。コンセプトだけではダメでした。そんなこんなしていたら、2014年に5年成績が出そろったので、2015年に投稿を開始しましたが、3誌で全滅、
大学院~留学時代に、JBMR、OPI、OC、Boneなどの研究雑誌にアクセプトされてきたプライドもズタズタで、新しい術式をまとめた臨床の論文を通すことが、いかに難しいかを知りました。日本雑誌であるJOSのレビュアーにもリジェクトをくらい、ちょっと途方に暮れていました。
そして2017年1月、骨切り術に理解のあるドイツの膝学会の雑誌「Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery(IF 1.6)」に、ついにアクセプトをもらいました、、、感無量です。
Tibial condylar valgus osteotomy (TCVO) for osteoarthritis of the knee: 5-year clinical and radiological results.
Chiba K, Yonekura A, Miyamoto T, Osaki M, Chiba G.
Arch Orthop Trauma Surg. 2017 Jan 28. doi: 10.1007/s00402-016-2609-3.
もちろん、オープンアクセスにしています。
10年におよぶ私の戦いは終わりました。もうほとんど怨霊。義務を果たし、解放されました。
普段は「いらない」にチェックするoffprint(別刷)ですが、今回はオーダーしています。
父が生きている間に(ってまだ74歳ですが)、それを手わたせるなんて、僕はしあわせ者ですね。
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