07PTH -6

しつこいですが第6弾の記事です。

それにしても、最近このブログは調子が悪いですね。なかなか開かない。引っ越しを計画中です。

この研究は「もう二度とこんな研究はできないんじゃないか」と思うほど、苦労した研究です。
下記に苦労したことを、思いつく限り、、

倫理委員会:
この研究の研究計画書は、臨床研究センターの生物統計家たちと一緒に練りに練って作成したのですが、倫理委員会では骨粗鬆症をよくわかってない人たちにガッツリ否定され、RCTを非ランダム化研究にせろとか言われてリジェクトされました。倫理的におかしくない研究を学内の身内に足を引っ張られ、今でも恨んでますね。
その後、委員に個別に解説をして、1ヶ月後に研究デザインを変えずに再提出し、アクセプトされました。

エントリー:
3種類の薬剤のどれになるかわからないRCTですので、患者への説明も難しく、エントリーは難航しました。
長崎市内の18施設に参加してもらい、各施設に説明しに行き、院長や部長に頭を下げてまわりました。
毎月、エントリー状況をグラフにしたレターを送りましたが、エントリーは予定通りにはいかず、エントリー期間の延長や施設の追加、選択基準の変更まで行いました。
130例達成した時は、感無量でしたね。

脱落:
感無量と思いきや、次に待っていたのは、強烈な脱落です。これは前回の記事でも述べた通りです。

画像解析:
本研究では、私たちが開発した新しい画像解析手法を用いたのですが、確立に時間を要しました。
アルゴリズムを開発、検証し、完成したと思ってデータ解析に取り組んでいたら、途中でエラーが見つかり、アルゴリズムを訂正し、全てやり直したり。

今までの研究は、20例程度を1人で解析するものが多かったので、経験したことがなかったのですが、
本研究のような130名の3回受診となると、データ量が半端なく多く、解析もグループで分担作業で行いますので、そこ出てきた問題が「ヒューマンエラー」です。

ヒューマンエラーにはとても興味があるのですが、とにかく「どのようにエラーを検出するか」がポイントと考えています。
解析者が手技を正確に実行できるように、丁寧に説明書を作り、トレーニングをして開始するのですが、それでもエラーは発生します。
怖いのは、計測結果だけを見ても、エラーがわからないことがあることです。微妙に間違ったまま採用されているデータがあるかもしれません。
どのようにエラーを検出するかは、いくつか技が必要ですが、容易な事ではありません。

統計解析:
本研究は、脱落が多すぎて、有意差が出にくかったことは、惜しまれます。
また、統計家とはキャッチボールがうまくいかまいことも多く、統計解析の結果をもらうまでに数ヶ月間のとてつもなく時間を要しました。

リビジョン:
レビュアーはもちろんのことながら、途中からはエディターも出てきて、けっこうやられました。

PDFプルーフ:
次回の最終回で、お話しますね。

— posted by 千葉恒 at 07:17 am   commentComment [0] 

07PTH -5

あと2-3記事はいけそうです。本テーマは、語ることが多いのです。

さて、この研究には大きな問題点がありました。それはとっても多い脱落率です。

下図のように、フォルテオは、46例エントリーして、17例が脱落して、18ヶ月までに29例しか残りませんでした。
脱落した17例のうち、10例がフォルテオ群に割り付けられた途端に「自己注射はしたくない」と言って脱落した人たちです。
他の2群になると信じて研究参加に同意したようです。

テリボンは、45例エントリーして、21例も脱落して、18ヶ月までに24例しか残りませんでした。
21例の脱落のうち、12例が治療開始後の「吐き気や倦怠感」などの副作用を原因に脱落した人たちです。

また、フォルテオもテリボンも「高い薬価」を理由に脱落した人もいます。

一方、経口ビスホスホネートは、40例エントリーして、2例しか脱落せず、18ヶ月までに38例も残りました。
効果がさほど強くないこの薬剤は、コンプライアンスはすこぶる良好で「継続は力」を発揮できます。

この脱落のデータは、リアルワールドで、実によく理解できる結果です。

フォルテオもテリボンもせっかく良い薬なのに、自己注射製剤ということ、または、副作用が出やすいということで、
その恩恵を受けれない患者さんがたくさんいる、ということであり、
「良い薬」であるかどうかの大きな条件として、「薬効」以外の要素も大きいことを感じさせます。


2022-06-12204913



— posted by 千葉恒 at 08:30 pm   commentComment [0] 

07PTH -4

最近、ブログの調子が悪いですね。なかなか開かない。調査してもらっている最中です。

そして、PDF問題Link は、、まだ解決していません。雑誌社との戦いは終盤になっています。続報をいずれ。

さて、今回は、テリボンの結果を説明します。

まず骨代謝マーカーですが、
テリボンはテリパラチドにもかかわらず、骨吸収マーカーを下げるという不思議な薬剤ですが、本研究でもその通りの結果が出ました。
そして骨形成マーカーは、前回のフォルテオと同じく、ベースラインの数値が高めだったため、高値を維持してる、と言える結果でした。

次にDXAですが、腰椎のBMDを18ヶ月で9%上昇させました。これは、フォルテオとビスホスホネートの間ぐらいです。

HR-pQCTで作業機序の詳細を見てみると、、

まずは海綿骨ですが、
海綿骨のBMDを5%上昇させています。前回述べた通り、この5%というのは、私たちの相場観からすると、かなり高いです。

海綿骨のどんな構造を特に変えているのか調べたところ、フォルテオと同じく、骨梁の空間の広がりを示す指標(V*trab)でした。
つまり「テリボンで特に改善する構造は、骨梁の連結性や太さ」です。

ただし、腰椎DXAの結果と同様に、テリボンの海綿骨BMDや骨梁連結性への作用は、フォルテオとビスホスホネートの間ぐらいです。
おそらくその理由は、テリパラチドの海綿骨への効果は、容量依存性だからだと思われます。
テリボンの患者さんは、週に1回の注射で済んでいる分、56.5 µg < 20 µg x7 = 140 µg ですので、総量は多くないことになります。

次に皮質骨ですが、
ここは本研究の最もコアな部分になります。テリパラチドの弱点と言われていた皮質骨BMDの低下が、テリボンではどうなっているか?

ドキドキしましたが、なんとか差がでてくれました。
下図(3番目の右)のCt.TMDという指標ですが、小さくて見えないかもしれませんが、赤(フォルテオ)に比べて、オレンジ(テリボン)が高い推移を示しています。
フォルテオで見られるような皮質骨BMDの低下が、テリボンでは見られない、という結果です。

テリボンは、投与頻度を週に1回にすることで、骨吸収を上げない、むしろ下げる作用を得ており、それが、皮質骨のBMDを低下させなかった原因かと思います。

皮質骨多孔性(Cortical Porosity:Ct.Po)に関しては、前回述べた通り、3群で差がありませんでした。
第二世代HR-pQCTで形態が捉えられるような、一定の大きさをもつ皮質骨多孔性が増えるほどの作用を、フォルテオやテリボンは持ってないということかと思います。

そして、皮質骨の厚み(Cortical thickness:Ct.Th)に関しては、しっかり増えていました。
3D画像では、主に皮質骨の内膜面に骨形成が確認されました。

結果として、テリボンは、海綿骨と皮質骨の全ての骨微細構造に対して、バランスよく効果を有しており、
皮質骨と海綿骨を合わせたトータルの骨強度の指標である破壊荷重(Failure load:FL)をしっかり上げていました。

こうして、私たちの研究では「テリボンはやはり皮質骨BMDを下げないんだ」ということを証明することができました。

ただし、前述の通り、海綿骨への作用がフォルテオとビスホスホネートの間ぐらいですので、通常診療のDXAでは、上昇する数値が小さいと感じられるケースもあるかと思います。
逆に言うと、数値に見えない効果ですので、BMDの上昇率に対して骨折抑制率の高いこの薬剤の、作用機序の説明になっているかもしれません。


2022-05-2651511



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— posted by 千葉恒 at 08:59 am   commentComment [2] 

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