まず骨代謝マーカーですが、いきなり、予定外の結果が出ました。
骨吸収を上げずに、骨形成だけ増加したのです。
ただよく見ると、ベースラインの骨吸収マーカーの数値が高値だったため、骨吸収を上げず、ではなく、高値を維持して、でした。だと納得です。
次にDXAですが、腰椎のBMDを18ヶ月で12%も上昇させました。さすがフォルテオです。
「フォルテオは大腿骨や橈骨などの四肢骨(非椎体)には効きが弱い」というイメージがありますよね。
では、フォルテオを開始すると、四肢骨の骨折が増えているでしょうか?そんなことはないですよね。
大腿骨のDXAを見ると、BMDは上昇しており、ビスホスホネートと同等の効果はあります。
一方、橈骨骨幹部のDXAを見ると、たしかにBMDを低下させています。
HR-pQCTでその真相を精査します。
まずは海綿骨ですが、
海綿骨のBMDを6%上昇させています。この6%というのは、私たちの世界の相場観からすると、かなり高いです。
海綿骨のどんな構造を特に変えているのか調べたところ、骨梁の空間の広がりを示す指標(V*trab)でした。
つまり「フォルテオで特に改善する構造は、骨梁の連結性や太さ」でした。イメージ通りですね。
次に皮質骨ですが、
過去の報告と同様に、皮質骨のBMDを他群と比較し低下させていました。
テリパラチドは新陳代謝を高めながら新生骨を作り出す薬剤で、新生骨は石灰化度が低いので、低下するのは理解できます。
フォルテオは皮質骨多孔性(Cortical porosity:Ct.Po)を増加させる、と聞いたことがあるかもしれません。
実は本研究では、増加しませんでした。困りました。これは本当に悩みましたが、最終的にその謎は大部分は解けました。
私達が使用している新しい第二世代HR-pQCTは、古い第一世代HR-pQCTと違い、皮質骨多孔性の算出方法が違うのです。
第一世代HR-pQCTは、皮質骨内に明確な空隙がなくても、石灰化度が低下している部位があれば、そこをPorosityと判定します。
第二世代HR-pQCTは、解像度が上がったため、皮質骨内にしっかり描出された空隙のみをPorosityと判定するようになっています。
つまり、テリパラチドで生じる微小なPorosityや石灰化度の低い新生骨は、第二世代HR-pQCTでは、皮質骨多孔性として検出されないようになり、皮質骨BMDの低下としてのみ検出されるようになったと思われます。
一方、皮質骨の厚み(Cortical thickness:Ct.Th)に関しては、しっかり増えています。
その結果、皮質骨のBMDは下がりますが、皮質骨の厚みが増え、相殺され、さらに海綿骨も増えているので、トータルの骨強度(Failure load:FL)は上がっていたのです。
つまり私たちの研究では、フォルテオが末梢骨を弱くする、という噂は、完全否定されました。
ただし、本研究は、骨粗鬆症未治療の患者さんの研究ですので、逐次療法の場合は、非椎体への上乗せ効果が少ない可能性は、否定できません。
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