07PTH -3

説明の順番として、フォルテオが先の方がしやすいので、今回はフォルテオの結果を解説していきます。

まず骨代謝マーカーですが、いきなり、予定外の結果が出ました。
骨吸収を上げずに、骨形成だけ増加したのです。
ただよく見ると、ベースラインの骨吸収マーカーの数値が高値だったため、骨吸収を上げず、ではなく、高値を維持して、でした。だと納得です。

次にDXAですが、腰椎のBMDを18ヶ月で12%も上昇させました。さすがフォルテオです。

「フォルテオは大腿骨や橈骨などの四肢骨(非椎体)には効きが弱い」というイメージがありますよね。
では、フォルテオを開始すると、四肢骨の骨折が増えているでしょうか?そんなことはないですよね。

大腿骨のDXAを見ると、BMDは上昇しており、ビスホスホネートと同等の効果はあります。
一方、橈骨骨幹部のDXAを見ると、たしかにBMDを低下させています。

HR-pQCTでその真相を精査します。

まずは海綿骨ですが、
海綿骨のBMDを6%上昇させています。この6%というのは、私たちの世界の相場観からすると、かなり高いです。

海綿骨のどんな構造を特に変えているのか調べたところ、骨梁の空間の広がりを示す指標(V*trab)でした。
つまり「フォルテオで特に改善する構造は、骨梁の連結性や太さ」でした。イメージ通りですね。

次に皮質骨ですが、
過去の報告と同様に、皮質骨のBMDを他群と比較し低下させていました。
テリパラチドは新陳代謝を高めながら新生骨を作り出す薬剤で、新生骨は石灰化度が低いので、低下するのは理解できます。

フォルテオは皮質骨多孔性(Cortical porosity:Ct.Po)を増加させる、と聞いたことがあるかもしれません。
実は本研究では、増加しませんでした。困りました。これは本当に悩みましたが、最終的にその謎は大部分は解けました。

私達が使用している新しい第二世代HR-pQCTは、古い第一世代HR-pQCTと違い、皮質骨多孔性の算出方法が違うのです。
第一世代HR-pQCTは、皮質骨内に明確な空隙がなくても、石灰化度が低下している部位があれば、そこをPorosityと判定します。
第二世代HR-pQCTは、解像度が上がったため、皮質骨内にしっかり描出された空隙のみをPorosityと判定するようになっています。
つまり、テリパラチドで生じる微小なPorosityや石灰化度の低い新生骨は、第二世代HR-pQCTでは、皮質骨多孔性として検出されないようになり、皮質骨BMDの低下としてのみ検出されるようになったと思われます。

一方、皮質骨の厚み(Cortical thickness:Ct.Th)に関しては、しっかり増えています。

その結果、皮質骨のBMDは下がりますが、皮質骨の厚みが増え、相殺され、さらに海綿骨も増えているので、トータルの骨強度(Failure load:FL)は上がっていたのです。

つまり私たちの研究では、フォルテオが末梢骨を弱くする、という噂は、完全否定されました。

ただし、本研究は、骨粗鬆症未治療の患者さんの研究ですので、逐次療法の場合は、非椎体への上乗せ効果が少ない可能性は、否定できません。


2022-05-2651511



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— posted by 千葉恒 at 05:04 am   commentComment [0] 

07PTH -2

前回投稿の件は、まだ解決していません。また追記しますね。ふぅ、、

本研究の主役は2つで、フォルテオとテリボンです。いずれもPTH製剤です。

PTHは parathyroid hormone、つまり副甲状腺ホルモンのことですが、そもそもヒトの副甲状腺ホルモンは、
骨を溶かして血中のカルシウムを上昇させる作用があります。骨は減るのです。

ところが不思議なことに、PTHを「間欠的に」投与すると、骨がとっても増えるのです。
「間欠的」の方法として、フォルテオは「毎日1回 20ug」を、テリボンは「週に1回 56.5ug」を、皮下注射します。

07PTHとコードされた本研究の目的は、投与方法の異なる2つのPTH製剤(1-34PTH:テリパラチド)で、
骨への効果がどのように異なるかを、HR-pQCTを用いて精査することです。

2つのPTH製剤の特徴を知るにはコントロールが必要であり、今回、経口のビスホスホネート製剤としました。
つまり、連日テリパラチド、週1回テリパラチド、経口ビスホスホネートの3群の、ランダム化比較試験(RCT)としたのです。

本研究の新規性は、
- テリボンは、made in Japan の薬剤であり(旭化成ファーマ)、HR-pQCTのデータが世界にまだないこと。
- フォルテオは、海外データはあるのですが、第一世代HR-pQCTで、結果もバラバラで、第二世代HR-pQCTのデータは世界にまだないこと。
- フォルテオとテリボンの違いを、ランダム化比較試験(RCT)で調査していること。
などで、意気揚々と始めましたが、まぁ、苦労の連続でした。

研究名は、TERABIT study (テラビット スタディ)です。がんばって考えました。
randomized controlled trial of daily TEriparatide, weekly teripaRAtide, or BIsphosphonaTe in patients with osteoporosis

次回より、研究の結果を解説していきます。


2022-05-2651452



— posted by 千葉恒 at 06:38 am   commentComment [0] 

07PTH -1

私たちHR-pQCT研究グループ(RiBSLink )からの、第18弾の論文がアクセプトされました。

Randomized controlled trial of daily teriparatide, weekly high-dose teriparatide, or bisphosphonate in patients with postmenopausal osteoporosis: The TERABIT study

Bone(IF 4.398)にアクセプトされ、PDFがフリーでダウンロードできるのですが、、まだダウンロードしないでください!

この研究は、2016〜2020年に当科で行われた、テリパラチド連日製剤(フォルテオ)、テリパラチド週1回製剤(テリボン)、ビスホスホネート製剤の無作為化臨床試験(RCT)で、私のキャリアの中でも最も重要な研究の1つとなります。

まぁ、とんでもなく苦労した研究でして、倫理委員会、エントリー、脱落、画像解析、統計解析、リビジョン攻防、全てにおいて、苦労の記憶しかありません。
そして、現在も、最終PDFの作成でエラーが発生し、雑誌社と大攻防してます。

HR-pQCTのデータは、多数のパラメーターがあり、表は大きなものになりがちなのですが、
下記の画像のごとく、とんでもない縦長の表が作られてしまい、それがPDFになって公開されてしまいました。

下の図、見えますかね? 2列におよんだ縦長の表が。とっっても読みにくいんです。
しかしよくもまぁ、こんな表を作りますよね。2列にまたがるぐらいなら、最初から2列分使えよな。

2022/4/12、PDFの公開当日に気づいて、すぐさま雑誌社に、訂正の依頼をしました。ここから、長〜い闘いが始まります。
特に留学経験のある方ならよくおわかりと思いますが、こういう時の対応はとんでもなく怠惰なのです。

2022/4/12 訂正依頼のメール → 返事なし
2022/4/13 再度メール → 返事なし
2022/4/14 「担当者に転送します」の返事 しかし、担当者からのメールなし
2022/4/15 再度メール → 返事なし
2022/4/18 再度メール → 返事なし
2022/4/19 再度メール → やっと返事が来る!(嬉)データを送れと言われ送る。
2022/4/20 2-3日で訂正するとの返事(嬉)
2022/4/22 訂正されてないため、再度メール → 返事なし
2022/4/25 訂正されてないため、再度メール(ついに怒りメール) → 謝罪の返事くる
2022/4/28 訂正されてないため、再度メール
2022/4/29 2-3日で訂正するとの返事(疑心)
2022/5/2 訂正されてないため、再度メール
2022/5/4 2-3日で訂正するとの返事(疑心)

2022/5/9 ついに縦長の表が訂正される!!(下図) と思いきや、訂正依頼してない表が、なぜか誤訂正されている。
2022/5/9 怒りメール(2回目)
2022/5/11 謎の回答をされる
2022/5/12 勘違いを訂正する
2022/5/13 謎の回答をされる
2022/5/13 勘違いを訂正する → 理解した模様、データを送れと言われ送る
現在に至る

書いててイライラしてきました。
表が5つあるのですが、縦長だった表3〜5は解決。表2は未解決。表1は誤訂正、の状態です。
今週も催促メールをせんといかんのかい。

知人からの知らせを聞く限り、この1ヶ月の間に、間違ったPDFがかなりダウンロードされている模様。
「画竜点睛を欠く」とはこのことだ。気が晴れない、、

2022-05-1672538




2022-05-1682340



— posted by 千葉恒 at 07:13 am   commentComment [0] 

09RA

私たちHR-pQCT研究グループ(RiBSLink )からの、第17弾の論文がアクセプトされました。

Analysis of bone erosions in rheumatoid arthritis using HR-pQCT: development of a measurement algorithm and assessment of longitudinal changesLink

HR-pQCTは主に骨粗鬆症の分野で使用されていますが、もう1つの応用分野は関節リウマチです。

関節リウマチでは、手指の関節(主にMCP関節:指の付け根の関節)の、関節破壊(骨びらん)、骨粗鬆症化(傍関節骨粗鬆症)、軟骨摩耗(関節裂隙狭小)の評価に用いられています。

しかしながら、いずれもまだ解析手法が確立しておらず、世界の研究グループが開発を進めている状況です。

私たちは、今回の論文で、MCP関節の骨びらんを定量化する新しい解析アルゴリズムを提案しています。

本手法では、まず骨表面にある直径0.5mm以上の全ての陥凹を三次元的に抽出し、その中から一定の判定基準で、骨びらんを同定しています。
下の図では、Eの画像からCの画像を引き算することで、Fの骨びらんを抽出しています。

精度を検証した結果、骨びらんの体積のRMS%CVは3.97%と、欧州の研究グループと比較して良い結果が得られています。

白石和輝先生による本論文は、PLOS ONE(IF:3.24)にアクセプトされました。おめでとうございます!

(ところでアクセプトされて数週たちがますが、なかなかPubMedにアップされない初めての状況です。PLOS ONEは入金を確認しない限り進めないのでしょう。大学からの入金は来月末とのこと。。)
(追記:私のカード払いに変更したので、進むかな?)
(追記:やはり入金したら、pdf化、PubMed掲載が一気にすすみました。)

2022-04-0290527



— posted by 千葉恒 at 05:46 am   commentComment [0] 

ことしも

ことしも
この季節になりました。
近所のナニワイバラです。
きれいですね。大好きです。

IMGP4610



— posted by 千葉恒 at 08:20 am   commentComment [0] 

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