DXA説明のコツ

私は研究の世界においては、CTや骨微細構造の専門として認知されていますが、
前回話したように、臨床においてはDXAの重要性がとても高いので、DXAへのこだわりは強いです。

今日はDXA説明のコツを、治療モニタリングを中心にまとめてみます。

1)T-scoreでなくYAMで説明
世界標準はT-scoreで、YAMは日本のみ概念ですが、YAMの方が説明が容易です。
若者がYAM100%で、歳をとると誰でも90、80%と減りますが、
70%を下回ると骨粗鬆症と確定診断され、骨折しやすい状態と言えます。

2)治療効果は差でなく変化率で見る
治療効果は変化率で評価するのが世の決まりとなっています。
例えば50%が55%まで上がったとしたら5%アップでなく変化率としては10%アップです。
100%が105%まで上がったら5%アップなので、実は、骨密度は高くなると変化率は小さくなっていきます。

2)腰椎BMD
L1-4で評価します。半年で2~3%上がれば上出来です。

下がった時は、薬が効いてないと判定する前に、この半年間で起きたイベントを聞きます。
例えば何か病気をして入院を1ヵ月間してたとか、それだけでほとんどの方は骨密度の低下が生じます。

また、毎回+2%→+2%→+2%と直線的に上がるわけではなく、
+4%→+0%→+2% や、+4%→-2%→+4%みたいに、上がったり下がったりしながら、トータルとして上がることもあります。
1回下がったからといって、簡単に無効とは判定できません。

椎体骨折が発生するとその椎体のBMDは高くなります。変性側弯は多椎体のBMDを上げてしまいます。
いずれも、L1-4平均値の評価から除外しないといけません。

3)大腿骨BMD
大腿骨全体(Total Hip)と大腿骨頚部(Femoral Neck)で評価しますが、
前者の方が信頼性が高く、モニタリングは大腿骨全体(Total Hip)でします。

大腿骨BMDを上げる事は容易ではなく、半年で1~2%上がれば上出来です。
大腿骨は運動量に関係しますので、上がりが悪い方には、運動療法の指導もします。

大腿骨BMDは、実は左右差があり、ほとんどの施設では片方しか撮影しませんが、本来は左右とも測定ことが望ましいです。

4)そもそも早期発見治療が重要
YAM50%を70%にするには、40%の増加率が必要です。
しかしながら、ほとんどの薬は数年間で40%も増やすことができません。
治療薬は以前と比べて強力になったといえども所詮この程度で、本来はもっと強力な薬が必要です。
そのような薬のニーズはありますが、現在、新薬開発はほとんどなくなってしまいました。
よって今後も、早期発見、早期治療が重要と言うことになります。


— posted by 千葉恒 at 06:29 am   commentComment [2] 

骨粗鬆症の治療継続

相変わらずWeb講演をやっているのですが、先日、骨粗鬆症の治療継続について質問を受けました。

たしかに骨粗鬆症の治療を継続してもらう事は簡単ではないです。
骨粗鬆症は普段は症状がないので、お薬を飲んでも何か自覚症状が変わるわけではなく、飲み続けるモチベーションが湧きにくい薬です。
しかしながら骨折したときのインパクトは大きく、特に頻度の高い椎体骨折の場合は、症状も残りやすく再発率も非常に高いためタチが悪いです。

継続のポイントは、私の考えとしては以下の4つがあります。

1)定期的な骨密度測定
1つ目は、骨密度を定期的に検査することです。私の場合は6ヶ月または12ヶ月おきに行っています。
腰椎・大腿骨DXAで評価することが大事で、残念ながら橈骨DXAや踵骨QUSでは、骨密度上昇を確認することは容易でないです。
骨密度が少しでも上昇していれば、患者さんとしてはモチベーションが継続できます。
低下したらしたで、お薬を変更したりしてさらに継続することができます。

2)骨代謝マーカーは?
正直、継続率にはあまり役に立ちません。
骨代謝マーカーは患者さんには理解しにくく、そもそも保険診療上の回数制限もあります。

3)治療期間を最初に宣言
あまり知られていないコツですが、最初に治療方針と治療期間を説明することは、治療継続率においてとても重要です。
なぜならば、骨密度を上昇させるには、とっっても長い期間を要する事を、患者さんはほとんど知らないからです。
私の場合は、初回の骨密度検査を見て「少なくとも3から5年の治療期間が必要です」と宣言することが多いです。
その期間は通院しないといけないな、と最初に心構えてもらうことは、意外と重要です。

4)途絶えたら連絡を取る
最後に単純な話ではありますが、通院が途絶えた患者さんに連絡を取ることも重要です。
しかし、連絡をとっても「まだせんといかんの?もう十分したし、症状もないからいいでしょ」となるので、
やはり定期的に骨密度検査をして、現状を把握することが重要となります。

— posted by 千葉恒 at 09:25 am   commentComment [0] 

再開

仕事での苦難が続き、久々にデプってました。

体力ないけどメンタルは丈夫なつもりですが、同時多発的に畳み込まれると、心折れるよね。
「苦労したぶん良いことあるよ」は、私の信じるところのものですが、
今回は、もぉ、次から次へと、、えらい苦労しています。

一方、歳をとれば責任ある立場にもなり、
マルチタスクが一個ずつ増えていき、鏡見ると、なんか老けたな。

昔のブログLink を見返すと、まだ何にも結果を出してないのに、楽しそう。
今の自分は、実績は増えていくのに不安を抱えて、キラキラしてないな。

やまを越えたので、気持ち入れ替えて、再開します。

— posted by 千葉恒 at 10:30 pm   commentComment [0] 

疲れましたね

最近、流行りのマスク荒れしてます。

なんだか疲れましたね。背負いグセがあるので、リセットできずに溜まっていく一方です。


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— posted by 千葉恒 at 09:38 pm   commentComment [0] 

追悼 Harry K. Genant

骨粗鬆症の世界で著名な Harry K. Genant UCSF教授が 1月14日に亡くなられました。
私のボスのボスにあたります。椎体骨折のSQ評価法(Genant分類)をご存知の方も多いかと思います。骨粗鬆症だけでなく、関節リウマチ、骨軟部分野の画像評価で大変ご高名な先生でした。

追悼文Link が公開されています。
1942年イリノイ州も生まれ。私の父と同い年だったのか。もともと宇宙飛行士になりたかったと言うのは初めて知りました。
レジデント、フェロー、アテンディングはUniversity of Chicago。そして、1974年にUniversity of California, San Francisco(UCSF)放射線科のMSKのチーフとして赴任します。

Genant先生が設立した「Osteoporosis and Arthritis Research Group (OARG) in the Department of Radiology, UCSF」は当時、世界で最も大きな骨の画像解析の研究グループでした。所属した研究者は、130名以上だそうです。そのグループから現在も世界中で活躍している多くのリーダーを輩出しています。Genant先生は2004年に引退し、OARGは解散、分裂しました。
私は分裂したグループの1つ(MQIR)に2011年から所属していました。そこではかつてのGenant先生の巨大ラボの話も何度か耳にしたことがあります。
また、Genant先生は1998年にSynarcという画像評価に特化した医薬品の治験会社(CRO)を設立し、そのセカンドキャリアでも活躍されていました。

お住まいは、Tiburonという、ゴールデンゲートブリッジの先のサウサリートの対岸の美しい街で、個人的に好きな場所で、いちどこのブログでも書いたことがLink あります。その後はナパに住まわれていたそうです。

Genant先生は、私のアメリカでのボス(Sharmila Majumdar教授)のボスですが、私の日本での師匠である伊東昌子先生の師匠でもあります。
伊東先生が3年前に、日本骨粗鬆症学会を長崎で開催Link した時に、Genant 先生に特別講演で来ていただきました。Genant先生の日本での講演は、長崎が最後となりました。

Genant 先生とは何度もお話しさせてもらった機会がありますが、人気者で有名人すぎて、いまいち私のことは覚えてくれてなかった気がします。
人格者でカッコよくてとてもカリスマ性がありました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。


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— posted by 千葉恒 at 10:58 am   commentComment [0] 

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